MA22 一流プロと渡り合う

投稿者: | 2020年1月6日

どこかの誰かのダンスに役に立つことを願い、拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」を公開中です。今回は「一流プロと渡り合う」話しです。追加の話として、月刊ダンスファンが初めて世界チャンピオンをインタビューした時の写真を入れました。

 

 

MA22 第2章 サークルで上手くなる11の話
(第11話)一流プロと渡り合う

 

驚かないでください。アマチュアで競技会に出ている人でも、サークルだけでダンスを楽しんでいる人にも一流のダンサーに負けずにできることがあります。

当然、技術的なことではありません。

靴を履いている時間だけを比較しても、毎日教室で生徒にレッスンし、それから自分たちの練習をし、早朝や夜遅くには更に上のプロからレッスンを受け、休日には競技会に出たりしているプロたちと、片や、週一回とか月2回のペースでサークル・レッスンを受けている人たちを比較すること自体が間違いだと分かるでしょう。

 

初心者のあなたにもサークルで少し長く踊っている私たちにも、世界のトップ・ダンサーと張り合えることとは技術のことではなく、「思いやる心」です。

 

例えば、踊っている場合なら、人にぶつかるのが分かっているのに、「このステップしか知らないから」とぶつかって行かないこと。危ないと思ったら、男性はステップを止め(急ブレーキは禁止、できるだけ軽やかに)、次に出られるタイミングを見計らいます。

 

男性後退の途中、女性が「ぶつかるわ」と思ったら、左手に少し圧力を加えるとか、その手で軽く“チョンチョン”と合図を送るのも良いでしょう。それでもやむなくぶつかることはありますから、「ごめんなさい」とか「失礼しました」と丁寧に謝りましょう。

 

ぶつけられた方も知らない顔をせず、「大文夫です」とか、場合によっては「こちらこそ」などと同様に挨拶するのがマナーだと思います。踊りに夢中になり、ぶつかったことさえ気づかない人もいますが、そこまで二人の世界に没頭しない方がダンスは上手になるでしょう。一緒に踊る人も、気持ちにゆとりのある人の方がずっと楽しく踊れるものです。

 

パーティー会場では、男性は踊っているときでも周囲を見回し、何曲も踊れないでいる女性がいれば、次の曲で誘ってください。あなたがパーティーの主催者側なら、なおさらこのことを心に留めてください。

 

女性は待っているときには、楽しそうに、「いつでも踊れるわ」と言う顔をしていると誘われる機会が増えると思います。あまり踊る機会がないからといって、“でれ~”っとふてたように座っている限り、誘われるチャンスはないと思ってください。そこまで男性にボランティア精神を求めるのは酷でしょ?

 

 

サークル・レッスンのときも考え方は同じです。

男性も女性も他の人が同じようにレッスンを受けられているか、パートナーを交替しながらの練習では、みんながきちんと練習できているか気を配りましょう。好みの人と踊りたい気持ちも理解しますが、ここは団体レッスンの場ですからちょっと我慢しましょう。

 

以上で述べてきたことは当たり前のことで、踊りやサークル活動に限ったことではありませんが、当たり前のことが当たり前にできる、それがダンスにも大切だと思います。ダンスは決して技術だけで踊るものではありませんから。

 

以前、ダンス雑誌の企画で当時のモダン世界チャンピオンのマイケルとビッキー・バー(Michael and Vicky Barr)ご夫妻と日本チャンピオンの中川勲・詠子ご夫妻との対談があり、司会をさせていただいたことがありました。そのときバー氏が、

「プロの中にもハートのない踊りをしている人たちがたくさんいます」

と話されたことをよく思い出します。

 

思い出す度に、技術以外のところこそ、私たちがプロと渡り合えるところだと確信するのです。

 

(「第2章 サークルで上達する11の話(第11話)一流プロと渡り合う」おわり)

 

 

 

■追加の話

上のバー氏の言葉は、ダンスファン1986年5月号掲載「トップが語る日英ダンス事情」のインタビューでお聞きしたもの。このインタビューでは、モダンでバー夫妻と中川夫妻、ラテンでフレッチャー夫妻と玉城夫妻の二つの対談が行われました。私は司会と通訳を務め、録音テープ起こしから原稿も仕上げる仕事をさせていただきました。世界チャンピオンとの対談は日本のダンス雑誌初のことだったと思います。

(1986年撮影)左からAlan & Hazel Fletcher, Michael & Vicky Barr, 中川勲・詠子先生、玉城盛辰・富美子先生、私

 

ハッピー・ダンシング!