#006 ワルツレッスン雑学1 ラウンド・ワルツ

投稿者: | 2020年1月6日

ダンスビュウ2017年1月号に「ワルツレッスン雑学」という記事を書かせていただきました。このブログ「私のダンスノート Part 2」では、そのときの原稿に手を加えて紹介します。

 

 

 

#006 ワルツレッスン雑学1
ラウンド・ワルツ(Round Waltz

 

「斜めのワルツ」って、なに?

ダンスを始めて間もない頃、「ダイアゴナル・ワルツ」の言葉を目にしました。ダイアゴナル(Diagonal)は英語の「斜め」の意味で、これは辞書を引けば解決しますが、私たちが踊るワルツとどう違うのか、長年、不思議に思っていました。当時はワープロが出始めた頃で、今のように手軽にインターネットで「検索」できる時代ではありませんでした。

結論を言うと、「ダイアゴナル・ワルツ」と「私たちが踊るワルツ」は「同じ」でした。ただ、1920年代の初期のワルツは「ダイアゴナル・ワルツ」ではなく「ラウンド・ワルツ(Round Waltz)」でした(注:ラウンド・ダンスで踊るワルツではありません)。極端に言えば一直線に踊りました。

男性はLODに面して始め、2小節で1回転して再びLODに面します。このラウンド・ワルツの頃の世界チャンピオンには標準テンポの生みの親のビクター・シルベスター(Victor Silvester)やダブル・リバース・スピンを考案したマクスウェル・スチュワート(Maxwell Stewart)がいます。

 

 

✅ラウンド・ワルツを再現

ビル・アービンの最後のレクチャーでトニー&アマンダ・ドクマン(Tony & Amanda Dokman)にラウンド・ワルツを再現してもらうシーンがありますので、切り抜いて紹介しましょう。

踊りの前にアービン氏は、

  • ジョセフィン・ブラッドリーが亡くなり、彼女が生前に書き留めたものを遺品として頂いたこと、
  • 今回のレクチャーでお話する多くは、彼女の体験記(自叙伝)からのものであること、そして、
  • 皆さんは(ブラックプール大会で)今の踊りを見ていますが、それには必ず始まりがあった

といった内容を話しています。また、踊りの後で

ジョセフィンのメモには、『(ラウンド・ワルツを見て)少し変だと思った。なぜ誰も右回転をしないのだろう』と書いてあった

と話しています。

(World Congress Blackpool May 2005より、
撮影:デレック・ブラウン(Dereck Brown)氏)

 

 

✅ジョセフィン・ブラッドリー&フィリス・ヘイラー
(Josephine Bradley & Phyllis Haylor)

 

「ラウンド・ワルツ、つまんない!」――そう叫んだかどうかは分かりませんが、そう思っていたジョセフィン・ブラッドリーは違う踊り方を考案し、それをフィリス・ヘイラー&アレック・ミラー(Alec Miller)組に教えると、二人は優勝します(1926年)。

 

二人が教わったのは、クローズド・チェンジ ~ ナチュラル・ターン ~ クローズド・チェンジ ~ リバース・ターン。つまり、私たちがワルツの最初に習うステップ。そして、「壁斜め」や「中央斜め」に踊る踊り方です。それで、これをダイアゴナル・ワルツと呼びました。この「斜めに入り、斜めに終わる」発想と2小節で「1回転しない」画期的な発想のお陰で、現代のワルツが誕生し、その瞬間から、ラウンド・ワルツは姿を消すことになったのでした。

 

話を戻しましょう。踊りの最中に進行方向を見失う人は、この「入る角度と終わる角度」を考慮していないと思われます。用語の「斜め」は「45度」ですから、それを意識すると希望する方向に踊り続けることができると思います。ダイアゴナルを有効活用しましょう。

 

最後に余談ですが、ジョセフィン・ブラッドリー、ビクター・シルベスター、フィリス・ヘイラーさんの3名は英国スタイルのボールルーム・ダンスを築いた重要人物とされています。妻がヘイラーさんの教室で習っていた頃、何も知らなかったことが悔やまれます。

 

 

フィリス・ヘイラーさんからメダルテストのメダルを与えられる妻(久子)。1974年頃

 

ハッピー・ダンシング!