※ダンスビュー2016年12月号に掲載された記事「タンゴレッスン雑学」を書き直して紹介します。第1弾は、 Richard Gleaveさんのお話です。
#001 タンゴレッスン雑学1
グリーブさんは逆から考えてみた
プロでもアマでも、はたまた、私のような趣味のダンサーであっても、「タンゴの踊り方がいまひとつよく分からない」と悩んでいる人が多いのではないでしょうか? これは、そんな人に役立つかもしれない――というお話です。
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以前、スタジオひまわりに勤務していた時、リチャード&アン・グリーブさんのDVD収録で、びっしり5日間ほど一緒に仕事をしたことがあります。
お互いにきっちり仕事はしますが休憩時間は、別。ダンスを離れた話になったとき、私が、「若かったころは脚前挙ができた」と話すと、グリーブさんも、「僕もできた。今でもできるかもよ」と張り合って、この写真とあいなりました(笑)。お嬢さんのクレアちゃんも参戦!
さらに私が「逆立ちは大得意だった」と話すと、一緒に来ていたお嬢さんのクレアちゃんが負けじと倒立に挑戦。
グリーブさんがどれほど凄い歴史的なダンサーか、それを知り尽くしている会社の関係者たちは、きっと、ハラハラしながら見ていたことでしょう(笑)。
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さて、収録がタンゴになると、グリーブさんがこんなお話をされました。
「タンゴは、私にとって難しい踊りでした。自分では力強いと思っていても、実際は力み過ぎ、踊るのが大変でした。そこで、タンゴとは何かを知るために、全てのレッスンをタンゴに費やしましたが、1年経っても同じ問題を抱えたままでした。
それで、タンゴのレッスンを受けるのを諦め、自問したのです。『タンゴとは何か』ではなく、『タンゴでないものは何か』と。すると、少しずつタンゴの本質が見え始めてきました」。
そしてグリーブさんは、
フォックストロットにはスイングがある → タンゴにスイングはない → では、スイングとは何か? と、逆の順序で考え続け、スイングしていない形とは、
•垂直に立ち、
•頭、肩、ヒップの中心が一直線上にある、
という事実に辿りついたそうです。
全英選手権で8度も優勝した偉大なチャンピオンでさえ、このように悩んでいたのですね。グリーブさんさんはこう続けました。
「秘密があるとしたら、全てのベーシック・フィガーでは、この垂直な形でいること。ほぼ全ての動きでも……」
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(写真:Richard & Janet Gleave 1980年代に購入したもの)
撮影中、ホワイトボードにSMILEと書いて、さりげないアドバイスを送るクレアちゃんがいました。これらの写真は、(確か・・・)本邦初公開です(笑)。
グリーブさんのお話はいかがでしたか? サークルで踊る私たちは、いろんな場所でこの「逆からも考えてみる」方法を使ってみましょう。「逆から」だけに固執せず、「違う方向から」考えてみるのです。例えばこんな例はどうでしょう?
「右肩が出て気になるから、引っ込めなくちゃ…」 → 「いやいや、違う方向から考えてみよう。左サイドは落ちていないだろうか? 左サイドを出すと右肩が引ける!」
ハッピー・ダンシング!